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耐震補強工法「壁柱」

はじめに

地震

今後30年以内に、高い確率で発生するといわれている東南海・南海地震や上町断層帯地震。これらの将来予測や阪神・淡路大震災における死因の約8割が住宅の倒壊による圧死であることから、耐震工事の必要性を感じていても「予算がない」「引越しが大変」といった理由で、工事が普及しないのが実情である。一般社団法人大阪府木材連合会では、これまで京都大学防災研究所、生存圏研究所と連携し、大阪府、大阪市とも協議しながら耐震対策委員会を組織化し、耐震化率を少しでも高めるために変形性能に優れ、上部荷重も支えることができる壁柱工法を開発した。この壁柱工法は「家は損傷しても命は助かる」ということを主眼としており、特に1日のうち滞在時間の多い部屋など建物全体の補強ではなく1部屋のみに限定し、できるだけコストを抑えて補強することを主な目的としている。

なお、この壁柱工法に使用するのはスギの間伐材であり、現在戦後植林されたスギが伐採期を迎えているが、木材の需要低迷、外材との価格競争等の様々な要因により、伐採されず放置され、森林の荒廃につながる大きな問題となっている。しかし、この壁柱工法の普及が進めば、スギ間伐材の有効利用、森林整備による地球温暖化防止、また室内に木材を活用することによる快適な居住空間を創出することなど、耐震化と併せて木材の更なる活用にもつながっていくこととなる。

壁柱について

下記画像はPDFファイルです

実証実験について

①壁倍率の評価実験(一般財団法人日本建築総合試験所)


壁柱工法の耐力壁認定を得るために指定性能評価機関において評価試験を実施した。

②実物大振動台による動的耐震性能確認試験(京都大学防災研究所)

阪神・淡路大震災クラスの大地震時における変形性能と耐力性能を把握し、建物の安全性能を検証した。結果は阪神・淡路大震災の1.2倍の加震時においても「壁柱」の損傷はなく、また変形性能に優れ、(最大40cm変形しても元に戻る)変形に比例して粘り強い抵抗力を発揮する工法であることがわかった。また、大変形時においても屋根荷重や2階部分の荷重を含む自重をフレームの柱と共同して負担することができるのが大きな特徴となっている。構造用合板等を用いた板壁であっても変形が小さい場合にはそれなりの鉛直荷重を負担することは可能と考えられるが、大地震時の挙動を考えた場合には、変形が大きくなった時に鉛直荷重を負担できない構造に常時懸かっている鉛直荷重を幾分かでも負担させることは危険であり、同様な方針を採用することはできない。その点上述のように、壁柱工法では相当の変形が生じても破壊が急激に進展することがなく、変形に比例した抵抗力を保持するので、最後まで鉛直荷重支持部材として期待することができる。このような理由で、壁柱工法は1部屋補強を目的とはしているが、その補強により周辺の部屋の柱が荷重負担能力を喪失してもその分を負担することができるので、周辺の部屋の全面的な崩壊も防止するものと考えられる。

③実物大木造2階建て住宅での引き倒し実験(京都大学防災研究所)

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補強前の木造住宅は最大耐力27kN(震度5程度)で倒壊したが、壁柱による補強後の木造住宅は最大耐力120kN(震度7程度)でも倒壊せず、また、変形量も補強前と比較して1/3に抑えられていた。さらに壁柱補強した部屋は40cm以上変形しながら最大耐力の80%を保持することがわかり、1部屋補強の安全性が実証された。

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