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耐震対策・平成19年度

府木連耐震対策委員会の設置
近い将来必ず起きる南海・東南海、上町断層等大地震震災に対して、府民の安全・安心・財産を守るため、木材界からの木材活用につながる耐震キャンペーンの発信、耐震対策の検討を行った。
12年前の阪神大震災で6,000人を超える犠牲者の70%は、建物崩壊による圧死や窒息死。今後、30年以内に50~70%の確立で、マグニチュード(M)7クラスの東南海、南海大地震、直下型地震の上町断層帯地震等が発生し、府内の広範囲にわたり大被害が確実視されており、こういった状況に対応し、耐震基準を満たさない「既存不適格建築物」の改善が減災に向けた最大の課題である。
今後府木連でも、府民の安全、財産を守るため耐震対策委員会を設け、府、各市町村と協力して草の根的に対策を進めることとした。

(1)木造住宅震災対策について大阪府との協議(2007年4月3日)

・概要
3月27日の能登半島地震(震度6強)において、周期1~2秒の地震波が木造家屋に追い討ち「キラーパルス」となり木造家屋に重大な被害を与えた。しかし、4寸柱を使った家屋は倒壊しなかったという報道もある。一方本府において、原則、昭和56年以前の建築物に関して所有者等が実施する耐震診断に要する経費の一部について補助制度があるが、東南海地震、南海地震の可能性が極めて高いといわれる現在、府で「耐震10ヵ年戦略プランを策定し、新たな支援制度の検討もなされ、耐震の改修等に助成措置もなされた。今後、府木連として、この制度を有効に活用し、府、市町村、各種団体等と協力して、木造住宅の耐震化を通して、木材の需要開拓を図るものである。

・今後の府木連としての行動(案)
「大阪府建築物震災対策推進協議会」に入会(B会員)
府の耐震化促進支援策に乗っかろうと思うと、まず協議会主催の耐震・改修講習会を受講して協議会の名簿に記載することが必要。
府の10ヵ年戦略プランの相談体制、出前講座等にも協力して、木材のPRを推進
府・京都大学林産加工学・大阪市立大学建築学各教室、(社)日本木材保存協会等、産・学・官連携のもと、例えば、木材劣化診断士による木材劣化診断の実施や、廉価の制震パネル、耐震補強モデル模型等を作成も行うなど幅広く③のPRに活用
建築サイドとの情報交換会を開催

(2)耐震施策先進県(静岡県)の事例調査(2007年4月26日)


・概要
プロジェクトTOUKAI(東海・倒壊)-O
 ・専門家の無料診断 市町実施  昭和56年5月以前の木造住宅
  対象 38万戸のうち4万戸診断(13~17年度)
  相談士(建築士、経験7年以上の大工)派遣
 ・補強計画の作成→96,000円を限度に2/3補助 
 ・補強工事→300,000円~ の助成
  「住宅直し隊」→講習会受講の建築士、大工等(14,15年2,872人)
 ・講習会 毎回800人
 ・県木造住宅耐震化推進協議会(会長 県建築設計事務所協会)~市町レベルの組織化
耐震家屋模型 名大 福和教授考案"ぶるる"1/100スケール(200千円)を各土木事務所に設置してビジュアルに理解してもらう
各町内会の自主防災組織が活発(班編成)
耐震コンクール2001年 壁ツヨシ等も考案 金具も連携
解体予定の公営住宅を解体することにより、補強済みのものと対象物との比較調査を実施

(3)大阪府との耐震対策協議(2007年5月14日)

・概要
会長コメント
「具体のアクションを起こしたい。耐震は商売よりも社会的な問題で府もよいプランを作成している。木材業界がその尖兵になろう。先日も静岡県に学習に行った。ニーズの掘り起こしや需要喚起などハードルは高いが、先ずは府の考えを聞き、議論を重ねれば必ずや良案が生まれる。実現に向けて先ずは大仲協とタッグを組み、大青協とも連携していこう。」
府の説明
10年後の耐震化目標は、90%(データによると府内23万戸の住宅がその対象)
耐震化は、住民・建築物所有者が自主的に取り組むのが基本だが、府市町村はできる限り、耐震化の阻害要因(危険の認識不足・情報不足・費用労力負担)を解消又は軽減する施策を展開する。阪神大震災も風化しており、地道な活動大切。一方相談コーナーも一般的なものは人気がなく、メーカーの工法展示には興味があることから、木材使用工法の展示も人気を呼ぶのでは。耐震診断、改修資格についての資格制度はないが、(社)大阪府建築士会の実施の「既存木造住宅の耐震診断・改修講習会の受講者(一級、二級建築士、木造建築士資格、又は、七年の業務経験必要)は、相談の窓口として名簿に記載。
*耐震補強工事に対する補助金は、基本的には構造評点1.0以上だが、各市町村により、0.7以上のものも対象
*耐震補強工事費の15.2%(限度額60万円、所得制限あり)助成
*税金の特例→耐震補強工事費の10%(限度額20万円)が所得税から控除
*耐震診断助成→自己負担額が従来の25,000円から5,000円に軽減
府木連の今後の取り組み
・今後府木連は、悪徳業者を排除して耐震化を進めるために行政と連携して積極的に取り組む。
・大阪府建築物震災対策推進協議会に加盟
・大阪府住宅リフォームマイスター制度への団体登録
・「既存木造住宅の耐震診断、改修講習会」の積極的な受講
・各木材祭りにおける耐震コーナーの設置等の普及活動の推進

(4)大阪府建築物震災対策推進協議会に加盟(B会員)  2007年6月22日付け

(5)第1回府木連耐震講演会(2007年8月3日)

 講師  福和伸夫名古屋大学大学院教授
 テーマ 「気付きから始める耐震化」
 内容
東南海・南海大地震は、必ず起こる。
先ず、脅しからスタートする。いやな話だがよく聞いてほしい。よほどのことのない限り人は、後ろから押されないと動かない生き物。地震に関して日本人の意識は、完全に二極化。気づいているか否か。やるかやらぬかの二者択一。備えている人(地域)とそうでない人(地域)、静岡、大阪では雲泥の差がある。今、やらないと全員が地獄だと静岡は気づいている。30代以下の人は、必ず遭遇するが、逃げ切れる可能性のある世代(60代以上)は、無関心。
大地震が日本の歴史を大きく変えてきた。
大阪の梅田、中之島は歴史的に埋立地。もっとも危険。市役所、朝日新聞社の立地はだめ。
過去30年の地震の震源と震源域から見ると,残るは三大都市の可能性大。
命を守る3条件
・良い地盤に住んでいるか。大阪は、かつての河内湖の埋立地にあり、仁徳時代に住んでいた上町台地は一応安全。しかし活断層が通っている。
・耐震構造の建物に住んでいるか。現在の建築基準法は、震度6弱に耐える家しか規定無し。 
 これは、最低基準。31mで耐震基準が変わるから、30.5mまでのマンション多い。
 大学の建築の教授は誰も超高層マンションに住んでいない。
・家具の転倒防止。阪神淡路大震災時は冷蔵庫がベランダまで猛スピードで動いた。
 84%が家屋の倒壊、家具転倒による圧死。
・ホイッスルを持っているか。300万人の大阪には、50台の救急車しかない。緊急電話回線も少ない。圧迫されると声が出ない。血液型記入IDホイッスルを持っている人から助けるようになっている。(トリアージ)
・家族で伝言ダイヤル「171」のエクササイズは必須。携帯はつながらず、固定電話は,停電時はアウト。公衆電話でコインのみ可。毎月1日が練習日。
・会社から家まで歩けるか。震災時帰宅支援マップ必須。
・水・食料を3日分の備蓄。
・車のバッテリーで発電
・知っている人と知らない人との差は歴然。自分はきっちり備えている。
・家作りの3要素。→強・用・美(強なくして用なし、用なくして美なし、強を忘れず)

(6)第2回府木連耐震講演会(2007年9月28日)

 講師  福和伸夫名古屋大学大学院教授
  テーマ 「建物の耐震化」
死に至る時間。15分で約3,000人。耐震化が命を救う唯一の手段。
兵庫南部地震での建物被害においては、老朽化、高い建物の被害大きい。新しい建物は、想定の何倍もの強さ。自動車販売ショールームは、柱が少なくガラス張りで壁が少なく崩れ落ちているところが多い。
耐震・免震・制震と診断・改修
 耐震…耐える。抵抗。強さと粘りの設計
 免震と制震…振動数・減衰・入力の設計
 免震…揺れを逃れる、入力の低減
 制震…減衰付与による、応答の低減、能動・受動
 耐震診断と改修 …診断方法  強さ(壁・ブレース→ブレース構造…柱・梁・ブレースのばらばらの部材が、現場でプレートとボルトで組立てられた構造。)と粘りの付与
 入力低減(免震改修)と減衰付与(制震改修)
東海・東南海・南海地震等で都市が被災したときは、約200兆円と国家予算規模の被害が出る。日本のみならず世界的に大きな破綻となる。東京の超高層ビルには、日本の上場企業の12%が本社を置き、売り上げの30%、100兆円を稼いでいる。
徹底的な、地震防災戦略が必要。→危険に気づく。地盤や建物を学ぶ。防災活動の実践。

(7)第3回府木連耐震講演会(2007年11月29日)

 講師 京都大学防災研究所巨大災害研究センター長 河田惠昭教授
  内容 「活断層と共存する都市…大阪に迫る巨大地震  その事前準備」
 
安政大地震→900人死亡。水は昔を覚えている。そのとき水に浸かったところは、又浸かる。
東南海、南海大地震は必ず今世紀半ばまでに起きる。
 泉州の溜池→活断層、世界で一番長い活断層→シルクロード、千里の竹林→活断層
 箱根・伊豆は一番危ない。びわ湖西部(ローズタウン)も危ない。
 全国のワーストワン被害地は大阪
*ワースト20位の内11が大阪府内(重点密集市街地)
1位 西成区、2位 生野区、3位 東住吉区、4位 東成区、5位 旭区、6位 阿倍野区、8位 城東区、10位 住吉区、13位 守口市、18位 門真市、20位 寝屋川市
SWOT分析が大切
SWOT分析とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人の、プロジェクトやベンチャービジネスなどにおける、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) を評価するのに用いられる戦略計画ツールの一つ。組織や個人の内外の市場環境を監視、分析している。
強み:目標達成に貢献する組織 (個人) の特質
弱み:目標達成の障害となる組織 (個人) の特質
機会:目標達成に貢献する外部の特質
脅威:目標達成の障害となる外部の特質
 どのように強みを活かすか?
 どのように弱みを克服するか?
 どのように機会を利用するか?
 どのように脅威を取り除く、または脅威から身を守るか?
府・京大・府木連セットでどのようなアクションが可能か。
・府、京大防災研との連携
⇒全国で耐震補強に平均200万円かかる。二の足を踏む。
家族ですんでいるところ(居間、寝室)だけの補強について、各種メニュー化を行う。(土壁の両面を木材で貼る。ふすまを板壁にする。etc) ⇒京大防災研のお墨付きをもらって

(8)京大防災研 河田教授との耐震の進め方についての協議(2008年2月7日)

趣旨
木材という素材を用いて、耐震についてどのように進めるべきか。
会員が耐震診断、施工時において、ユーザーに提示しうる大阪府木連独自の工法メニューを京大防災研の監修を得て整備することについて協議。

概要
まず、①壁をガチガチにするか ②部屋の中にシェルターをつくるか
木材という素材を用いて耐震をどう進めたらよいか。⇒防災研の監修必要
これまで、どこまで耐えうるかということに関して数字がない。⇒スギ、ヒノキについて各々数字が必要。メニューは色々あるほうがベスト。
一つのねらい目として、「企業」をターゲットにすることがある。
近年、同業組合の関心が高くなり、仕事を通して耐震を考えるようになってきた。
企業の三つの目標 

①社員及び家族の安全安心 ②社内財産の保全 ③営業の早期開始
社員の住宅を福利厚生で耐震工事を実施することは大きなビジネスになる。先鞭をつけることに意義あり。
耐震の先進県の静岡でも実際に実施するのは、退職時か、2所帯住宅の2タイプがほとんどでそれ以外は殆んどない。見通しが必要。⇒会社が残りの負担をしてくれるとなると進むのではないか。
メニューの提示について、数字の根拠が必要。→攻める戦略が欲しい。

・和歌山県は、南海地震において山間部住宅の孤立化についてどう対応するか教授に委託している。
災害時予想される日本のワーストワン ①西成  ②東成 ③生野各区
きちっとしたデータが必要。 震度6でもつぶれませんよ。といえなければダメ。
木造住宅の長所を残して、耐震補強をする施工例をつくる。
金額に応じた工事、1期、2期の工事の検討。なぜ耐震が進まないかについては、メニューが少ないこともある。
工事費のシュミレーションを算出⇒壊れ方の写真をとり、客観的に点数をつける。
接合部  チェックする人の講習を実施。
・新潟県では、20,000件の調査を実施し、外観の調査のみで78%はクレーム無し。
組合のポテンシャルを高めるいわゆる"売り"をこの機会につくる。社会の安全を俺達が守るという意識を培う。
一軒でも漏れたら、火災になり、街全体がダメになる。

(9)大仲協組合員との耐震・大阪府リフォームマイスター制度に関する連絡会(2008年3月19日)

府木連が府リフォームマイスター登録団体になる。
耐震講習会を出前で夕方から例えば仲買会館等で実施してもらえないか。
5万円の規模でどれだけの耐震診断ができるか。
耐震診断、改修をしてもし被害が発生すれば責任はどうなるか。
リフォーム事業者の資格。必ずしも建築士等の資格は要らない。⇒府の講習等の受講は必要。